血液の遺伝子診断で現在の社会的ランクを80%の正確さで予測出来る。アカゲザルを用いた研究 (カテゴリー:診断技術(記事数:13))


2012/04/18

血液の遺伝子診断で現在の社会的ランクを80%の正確さで予測出来る。アカゲザルを用いた研究

 集団で生活する多くの動物では、その集団内での社会的ランクが個々の個体に大きな身体的影響を与えることが報告されています。たとえば社会的ランクが低い個体ほど病気になりやすいなどです、また、長期的・種全体の進化的にも社会的環境は影響を与え、生存率産む子供の数などが影響を受けることが報告されています。こういった社会的状況から受ける影響はもちろん人間にも多かれ少なかれ当てはまると考えられますが、これまで、いったい社会的ランクの何がどのように身体的影響を生じさせるのかは明らかではありませんでした。

 今回、シカゴ大学の研究者らは、サル(アカゲザル)の集団を用いた研究を行い、社会的ランクが遺伝子の働きに短期間強くしかし可逆的に影響を与えることを発見し報告しました。この研究では、研究者らは10の集団に分かれて暮らすアカゲザルのメス合計49匹を用いて研究を行っています。メスザルの社会は厳格な階級社会であり、また各個体の社会的ランクは状況により変化します。研究者らはそれぞれのメスザルの社会的ランクを集団内での各個体のふるまいによりチェックし、次に血液検査などの検査を行い、社会的ランクと身体的状況に関係があるかを調べました。


 すると興味深いこと、社会的ランクに連動して働きの変わる987個の遺伝子が見つかりました。この中には免疫に関わる遺伝子が112個含まれており、社会的ランクが高いほど活発になる遺伝子もあれば、社会的ランクが高い時には働かなくなる遺伝子もありました。



 また集団内の特定のサルを隔離したり別の集団のサルを加えたりするなどして人為的にサルの社会的ランクを変化させたところ、社会的ランクの変化に伴い遺伝子の働きも数週間程度の期間で速やかに変化することが分かりました。(すなわち、社会的ランクの高かったメスザルは社会的ランクが高いサルに特有の遺伝子の働きを示していますが、社会的ランクが低くするとそれに応じて社会的ランクが低い個体に特有の遺伝子パターンを示すようになる。)

 驚くことに、この社会的ランクと遺伝子の働きのパターンを利用することで研究者らはサルの血液中の遺伝子発現を調べるだけでそのメスザルの社会的ランクを80%の正確さで予測可能であることを報告しています。

 また、遺伝子の差以外にも、高い社会的ランクのサルほど血液中にCD8陽性T細胞が多いことが分かりました。このことはガン細胞と闘う場合などに必要な細胞性免疫が強いことを示しています。また社会的ランクが低いほどデキサメタゾン(炎症抑制剤)に対する抵抗性が高く体内が炎症が起きやすい状況にあることが分かりました。先ほど述べた遺伝子の解析でも社会的ランクの高いサルほど炎症に関連する遺伝子(PTGS2、IL8RB、NFATC1など)の働きが低いという結果が出ており、この遺伝子の働きの差が実際の体内の免疫・炎症状態の差を生じさせていると考えられます。その他にも、DNAのメチル化状態も社会的ランクにより変化していました。

 今回の結果が人間に当てはまるかどうかが確認されたわけではありませんが、もし当てはまるなら血液検査によりその血液の持ち主がどのような社会的地位にあるのかおおよそ予想が可能かもしれません。

Category:診断技術



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