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β細胞
すい臓に存在する細胞
α細胞:グルカゴンを作る
β細胞:インスリンを作る

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2005/10/03
■キトサンスポンジを使って膵臓を再生する人工すい臓・糖尿病
体内でインスリンを作り出しているすい臓β細胞が死滅してしまうと、血液中のグルコース濃度をコントロールすることが出来なくなり、糖尿病となる。深刻な糖尿病では注射などでインスリンを注射し、血液中のグルコース濃度をコントロールしてやることが必要だが、すい臓の細胞を移植し、体内でインスリンを作らせようとした再生医療の試みもある。

この中でも近年、すい臓の組織(すい島)を皮下(皮膚の下)に移植する方法が注目を集めている。しかしすい臓の組織を長期間維持するためにはどうすれば良いのかといった問題が未解決であった。今回、研究者らはキトサンスポンジを用いてこれに挑戦している。キトサンはカニやエビなどの成分であるキチンが分解したもので、体内で徐々に分解される性質(生分解性)を用いて他の研究では生体外で血管構造を作らせたり、疑似的な皮膚組織を形成させる研究が進められている。

研究者らはまず、凍結乾燥によりCSを作成した。この作り出したCSは200-500μmの隙間を多く持つ多孔質構造になっており、このCSにラットすい臓より単離したすい島を各20個ずつ播種し62日間培養した。すると単離直後のすい島は単一のものが大部分を占めたが、徐々に2-4個のすい島から成るクラスターも(150-250μm)も観察された。

また、CS内で培養した小島は少なくとも53日後まで初期の形態を維持しており、すい臓細胞の機能であるインスリン産生は49日後まで継続しCS内は一定のインスリン濃度に維持され、その後急激に低下した。

このようなキトサンスポンジを使った方法はすい島を安定して培養出来、また機能させることが出来ることを示しており、皮下への膵島移植の発展につながる可能性がある。

原文
Tissue-engineered pancreatic islets: culturing rat islets in the chitosan
sponge.
Cell Transplant. 2001;10(4-5):499-502.


2005/04/18
■GLP-1を大量に摂取すると賢くなる。天才になる方法
GLP-1は腸のL細胞により作り出されるペプチドホルモンで、膵臓のβ細胞などに作用し血糖値が高い場合にはインスリン産生を促して血糖値を下げる働きがあり、糖尿病治療薬として期待されている物質です。今回この物質に知能を向上させる働きがある事が分かりました。
研究者がマウスの脳にGLP-1を直接投与したところ、空間学習能力の向上が見られました。またGLP-1よりも壊れにくいエキセンディン(exendin:トカゲのGLP-1)なら、血管に投与しても同様の効果があったそうです。
また、GLP-1のシグナルを受けるレセプターを壊したマウスを作成したところ、学習能力が低下していましたが、遺伝子導入によりGLP−1レセプターを海馬に復活させると学習能力は回復しました。
また、GLP-1レセプターを通常より大量に海馬に発現させたラットでは学習と記憶が増強しました。
またGLP-1レセプターを増加させると脳障害を与える物質に対する抵抗力も増強しました。

このようにGLP-1による脳への作用を応用した薬が開発出来れば認識力増強と神経保護を行える薬が開発出来るでしょう。
また、GLP-1はは腸管のL細胞が糖を認識すると体内に放出されます。すなわち糖をたくさん取ると体内にGLP-1が大量に分泌されるはずですが、賢くなるために太っても良いヒトは試してみてください。
ちなみに糖尿病治療薬としてGLP-1やGLP-1の体内での分解を防ぐ薬を多数の会社が開発中です。これらの薬は糖尿病にも効果あるけど、脳への効果もあるかもしれません。

※この研究でラットの空間学習能力は受動的回避学習法(passive aboidance task)という方法で行われています。具体的にはラットを明るい部屋と暗い部屋の2つの部分がある入れ物に入れ、明るいところに来た時電気ショック(1mAの電流を3秒)与え、危険なところだという事を学習させます。そして学習を行った後、1,3,7日後に再びその入れ物に入れ、どれぐらい明るいところを避けているかで学習能力を調べています。

原文題名:
Glucagon-like peptide-1 receptor is involved in learning and neuroprotection
(Nature Medicine 2003 vol.9 no.9 p.1173-9)


2007/08/10
■遺伝子操作した植物で糖尿病治療人工すい臓・糖尿病
中央フロリダ大学の研究者の報告によると、糖尿病治療薬であるインスリンの前駆タンパク「プロインスリン」と細胞内に入り込む能力を持つコレラ毒素のBサブユニットを連結したタンパク質を作るように遺伝子操作したタバコをつくり、この葉を糖尿病のマウスに与えたところ、血糖値の低下やすい臓β細胞の損失の抑制など糖尿病の進行を抑制する効果が見られたそうです。

糖尿病発症のメカニズムとしてインスリンに対する自己免疫反応が起こり、自己の免疫担当細胞がインスリンを産生するすい臓β細胞を破壊してしまうということが知られていますが、このインスリンに対する抗原性を経口投与により緩和することにより糖尿病症状の低減が見られるようです。

Expression of cholera toxin B–proinsulin fusion protein in lettuce and tobacco chloroplasts – oral administration protects against development of insulitis in non-obese diabetic mice
Volume 5 Issue 4 Page 495-510, July 2007


2006/10/11
■p16(INK4a)タンパクが加齢に伴う老化を引き起こすアンチエイジング・老化抑制
老化の一部はまるで誰かがわざと決めているかのようにプログラムされていることが知られていますが、今回見つかったp16(INK4a)は加齢に伴い老化を促進する働きを持っているようです。p16(INK4a)を持たないマウスを遺伝子操作で作り出すと、そのマウスは加齢による老化現象が抑制され、毒物のダメージを受けた後の生存率が高まりました。

p16(INK4a)というタンパクは加齢に伴い細胞内で量が増加することが知られています。今回、p16(INK4a)を持たないマウスを作り出したところ加齢に伴い起こるはずの脳内での神経細胞の増殖の低下や、多能性幹細胞の比率の低下といった現象が抑制された。p16(INK4a)は細胞増殖に関わるCdk4キナーゼを阻害し細胞老化に関係していることが報告されていますが、今回の報告は老化に伴いp16(INK4a)が増加することが老化現象を引き起こす原因となっていることを意味しています。ただし腸管の神経細胞などではp16(INK4a)を欠損させたマウスでも脳内で見られたような老化の抑制が見られなかったことから場所によってこのたんぱく質の老化促進作用の強さが違うと考えられます。

Increasing p16INK4a expression decreases forebrain progenitors and neurogenesis during ageing
Nature 443, 448-452

また、p16(INK4a)で阻害されるCd4kキナーゼはすい臓内でインスリンを作り出すすい臓β細胞の増殖に必要です。p16(INK4a)を通常よりも多く持つように遺伝子操作されたマウスはすい臓β細胞の増殖能力が低下し、p16(INK4a)を持たないマウスでは老齢になっても増殖能力の低下が起こりにくくなりました。さらに実験的に毒素をすい臓β細胞に作用させたあとの生存率を調べると、p16(INK4a)欠損マウスの方が高い生存率を示しました。毒素によりすい臓β細胞がダメージを受けた後に生存するためにはすい臓β細胞が増殖し再生することが必要ですが、p16(INK4a)欠損マウスではすい臓β細胞の増殖能力が高いため高い生存率を示したと考えられます。

p16(INK4a)の阻害作用を持つ薬を開発すれば老化を抑制する薬となるでしょう。ただしp16(INK4a)は別名「ガン抑制遺伝子」として知られており、発ガンの可能性は上昇することが予想されます。
老化と発ガンは表裏一体です。

p16INK4a induces an age-dependent decline in islet regenerative potential
Nature 443, 453-457




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