メチル化 |
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ヒトの体細胞に最も多いメチル化酵素DNMT1はDNA2本鎖の片側だけメチル化されている状態(ヘミメチル化DNA)を優先的にメチル化する。これにより子孫細胞にメチル化状態が受け継がれる。
----------このキーワードを使っている記事----------
2024.12.03:一度太ると脂肪細胞は太っていた時の情報をエピゲノム(DNA修飾)に保存し維持するのでリバウンドは必然(Nature 2024年11月報告)
2023.10.19:寿命を延ばす研究に関する12の着眼点と2019年からの進展(2023年版)
2023.10.11:tally Health社の月額59ドルからのサブスク。DNAメチル化測定による生物学的年齢測定と日々のアンチエイジングサプリのセット
2023.05.10:なぜBCGワクチンは癌や糖尿病、自己免疫疾患が改善する副作用があるのか
2023.04.06:Wikipediaのアンチエイジング研究年表(Timeline of aging research)がよくまとまっている
2023.02.20:ゲノムのメチル化度合いを測定すると実年齢が正確に測定出来る。メチル化を制御する技術と組みわわせて若返りの試みも
2021.02.22:2021年1月にNature Aging創刊
2021.01.19:iPS細胞を作るのと同じ方法を用いて網膜細胞をリプログラムにより若返らせて視力回復にマウスで成功
2019.11.13:生物学的実年齢(DNAメチル化頻度)を若返らせることに成功。市販の3医薬を1年間投与して2.5年若返る
2019.08.02:子供を作る前に父親が運動すると子供がメタボになりにくい体質になるというシンプルなマウスを使った実験結果
2017.05.24:葉酸はDNAのメチル化促進に働く。母体と同様に男性の葉酸摂取量も生まれてくる子供の神経・精神疾患発生率に影響。
2016.08.30:改変CRISPR/Cas9で狙った遺伝子を脱メチル化する技術が開発される
2016.03.15:模倣子(ミーム)も遺伝子の修飾を介して子孫に受け継がれることが動物実験で証明
2015.12.11:Nature Medicine誌の選ぶ2015年の医学の進歩まとめ
2014.02.13:性行為の段階での男性のストレス状態は精子のDNAメチル化に影響を与え、生まれた子供の成長を遅らせる
2012.04.18:血液の遺伝子診断で現在の社会的ランクを80%の正確さで予測出来る。アカゲザルを用いた研究
2024.12.03
一度太ると脂肪細胞は太っていた時の情報をエピゲノム(DNA修飾)に保存し維持するのでリバウンドは必然(Nature 2024年11月報告)
一度太ると脂肪細胞は太っていた時の情報をエピゲノム(DNA修飾)に保存し維持するのでリバウンドは必然(Nature 2024年11月報告)
海外ではセマグルチド(semaglutide)やチルゼパチド(tirzepatide)に代表されるグルカゴン受容体アゴニストを主成分とするダイエット薬が大人気のようですが、これらのダイエット薬を飲むの止めた後には、しっかりと体重増が再び増加する(ヨーヨー効果)があることは臨床試験結果からも明らかです。
今回の研究ではこのヨーヨー効果による体重のリバウンドが単なる食べ過ぎなどでは無いことを報告しています。すなわち、一度太ると脂肪細胞は太った時の代謝情報を保存しており、太る前よりも太りやすい状態を維持しているということです。
この太りやすい情報はエピゲノム(メチル化やアセチル化などのDNA修飾)で保存されているとのことです。
この論文ではこれらのエピゲノムのコントロールが今後の「リバウンド防止薬」の開発の糸口になるだろうと書いています。
(省略されています。全文を読む)
Category:ダイエット・メタボリックシンドローム
2023.10.19
寿命を延ばす研究に関する12の着眼点と2019年からの進展(2023年版)
寿命を延ばす研究に関する12の着眼点と2019年からの進展(2023年版)
同様のタイトルで2019年に書いてますが、大きく着眼点が変わってますね。2019年にピックアップした12項目はそのままに進捗や状況についてコメントしています。
(1)アンチエイジングに焦点を絞った金のある米国スタートアップ企業に注目
残念ながらこの4年間でアンチエイジングに関するスタートアップの株価は悲惨な事になっています。管理人も大損中。。。。ただし続々と新たなスタートアップが誕生しているようです。ただ、その内容を見るとサイエンスの新たな知見を元にして起業という風には見えない気がします。個人的にはスタートアップにはあまり期待していませんね。
(2)体内から老化した細胞を取り除く
セノリティクスと呼ばれるこの薬の研究こそがこの4年間のアンチエイジングに関する研究発展の主要な部分ですね。多数の非臨床・臨床研究が実施され、続々と新たな創薬候補が見つかっており、古い候補は臨床試験が進んでいます。しかし臨床試験の成果として革新的なものは無いように思います。次に注目を集めるためには「人間でどれほどの成果を上げられるか」を示す必要がありそうです。
●ワクチンタイプ
●CAR-Tタイプ
●ポリフェノール関連
●低分子医薬品・ペプチド
●まとめ記事
●免疫チェックポイント阻害剤
(3)「老化抑制」という「副作用」が知られる市販薬を飲む
上記したセノリティクスの一部も含まれますが、新しい話とか、目新しい臨床試験の結果は無いように思います。
(4)寿命を延ばす効果が期待されて開発されているサプリメント・天然物質
上記(2)のセノリティクスの一部も含まれますが、セノリティクス以外の話は見かけないですね。
(5)寿命を延ばす効果が期待されて開発されている開発中の薬
あまりパっとした話が無いですね。臨床試験が難しいせいでしょうが、セノリティクスと異なり作用がマイルドで全体的であるため臨床試験が難しいのかもしれません。
(6)未来の技術を信じて人体冷凍保存する
(7)脳だけになって生き残る(8)コンピューターに意識を移す
探してないだけかもしれないですが、目新しい話は無いように思います。
(9)臓器を新しいものに交換して長生きする
ヒトに移植可能なブタの研究は着実に進んでいるようです。この技術の進歩が進み続けることは間違いなく、10年後、20年後には大きな産業になっている可能性は大きいと思います。
(10)腸内細菌を最適化する
腸内細菌の研究は盛んですが、介入して治療方法にする話はそんなに臨床応用が進んでいないように思います。
(11)生体内の細胞をリプログラムして若返らせる
この話もここ5年で知見が蓄積しています。効果は間違いなさそうですが、全身同時にリプログラミング出来るわけではなくどのような治療法にもっていくのかが難しいかもしれません。
(12)癌を完全に治す
癌の研究は本当に盛んに行なわれていて、有望な薬が多数開発されています。気が付いたら癌は死ぬ病気じゃなくなっているってことも20年後ぐらいには期待出来るかもしれません。
老化評価
(省略されています。全文を読む)
Category:#エイジング関連まとめ
2023.10.11
tally Health社の月額59ドルからのサブスク。DNAメチル化測定による生物学的年齢測定と日々のアンチエイジングサプリのセット
tally Health社の月額59ドルからのサブスク。DNAメチル化測定による生物学的年齢測定と日々のアンチエイジングサプリのセット
★サプリは「Vitality」と「Amplify」の2種類
Vitalityサプリの中身は
★サプリ「Amplift」の中身は
★検査「TallyAge」はDNAのメチル化をチェックする試験で、実年齢でなく「生物学的年齢」を18〜100歳で評価していれるようです。85万のDNAサイトを評価して8000人のデータをもとに算出するとのこと。
あ〜、残念ながら現在はアメリカ国内のみからしから購入不可みたい。
(省略されています。全文を読む)
Category:#アンチエイジングを目指す企業
2023.05.10
なぜBCGワクチンは癌や糖尿病、自己免疫疾患が改善する副作用があるのか
なぜBCGワクチンは癌や糖尿病、自己免疫疾患が改善する副作用があるのか
一型糖尿病患者が多発性硬化症などの自己免疫疾患にBCGワクチンが効果があることが報告されていますが、このメカニズムを解析した報告です。
これらの自己免疫疾患では免疫制御に重要なヘルパーT細胞(CD4+T)の表面の受容体発現に重要な遺伝子が過剰にメチル化されているそうです。そしてBCGワクチンは3年かけてこの不具合を脱メチル化し改善させるとのこと。
(省略されています。全文を読む)
Category:免疫・アレルギー・自己免疫疾患
2023.04.06
Wikipediaのアンチエイジング研究年表(Timeline of aging research)がよくまとまっている
Wikipediaのアンチエイジング研究年表(Timeline of aging research)がよくまとまっている
他に延命(life extention)の戦略(Strategies)の項目も充実
2023年に上がっている項目を見ると
・長寿を目的としたカロリー制限の臨床試験結果が報告される
・AIを使った脳年齢を算出するプログラムの報告
・DNAメチル化を指標にした老化時計が健康の良い指標になることの報告
・デビット・シンクレアの13年にもおよぶ研究で哺乳類における老化の主要因はエピゲノムとの結論
・山中4因子を使ったマウス細胞のin vivo再プログラミングでマウスを延命する研究
・人間のゲノム中にひそむレトロウイルスが老化に関わっている可能性に関するレビュー
・細胞内の過剰な基礎エネルギー消費(Hypermetabolism)が老化のトリガーになるとの報告。
上がっている項目として
・老化細胞除去薬(Senolytics)
・食事制限とサプリメント
・その他のアプローチ
とあり、その他のアプローチには、遺伝子/エピゲノム改変、細胞のリプログラミング、エピゲノム再プログラム、ステムセルを増やす、ナノメディシン、組織工学、などなど。
(省略されています。全文を読む)
Category:#エイジング関連まとめ
2023.02.20
ゲノムのメチル化度合いを測定すると実年齢が正確に測定出来る。メチル化を制御する技術と組みわわせて若返りの試みも
ゲノムのメチル化度合いを測定すると実年齢が正確に測定出来る。メチル化を制御する技術と組みわわせて若返りの試みも
↓エピゲノム(遺伝子のメチル化度合い)と実年齢がぴったり一致しています。
20代〜70代の421名をDNAシークエンサーでエピゲノム(遺伝子のメチル化度合い)を測定。エピゲノムの特徴が実年齢と一致しており、人体の老化を客観的に定量化することが出来ております。
また、100歳以上の長寿者のエピゲノムを分析したところ、100歳以上に到達している人は年齢よりもエピゲノムが若く保たれていることが分かりました。具体的には、がん遺伝子や認知能力の遺伝子は若い状態に保たれ、抗炎症に関するエピゲノムは年齢よりも進んだ状態である傾向が強いことが分かりました。
エピゲノムに関しては市販薬のメトホルミンなどを飲ますことでエピゲノムを若返らせる研究が報告されています。
またCRISPR/Cas9を用いて特定のゲノムのメチル化を解除する技術も開発されています。
これまで「若返り」研究をしたくても「どれぐらい若返ったか」の測定が難しいという課題があったと思います。
この方法「生物学的な年齢」を測定することは、色々な治療や薬による若返り効果を厳密に測定するのに有効と思います。
また、開発されている様々なエピゲノムを操作する方法で本当に寿命が変化するのか大変興味深いところです。
(省略されています。全文を読む)
Category:#診断技術
2021.02.22
2021年1月にNature Aging創刊
2021年1月にNature Aging創刊
現在2冊目が発行されたところです。毎月第2木曜日に発刊なのかな?Nature Aging651イイネ
創刊号の研究関連のタイトルを適当に訳してみる
研究
(省略されています。全文を読む)
Category:未分類
2021.01.19
iPS細胞を作るのと同じ方法を用いて網膜細胞をリプログラムにより若返らせて視力回復にマウスで成功
iPS細胞を作るのと同じ方法を用いて網膜細胞をリプログラムにより若返らせて視力回復にマウスで成功
書籍「ライフスパン」でデビッド・シンクレアがちょい出ししていた研究がついに論文になったようです。
iPS細胞を作るに使用する山中4転写因子のうち3つ(Oct4、Sox2、Klf4)をウイルスベクターを用いて発現させることで視神経を損傷したマウスでは軸索が再生され、緑内障のマウスモデルや老いたマウスでは視力障害が回復するそうです。老化に伴うメチル化のリセットなども確認されており、細胞レベルでの「若返り」をメカニズムにする治療とのこと。研究者らはは2年以内に緑内障の臨床試験を行いたいとのこと。
癌がちょっと怖いけど、というか間違いなくガン化のリスクはあるだろうけど、うまくいくなら体内のあらゆる部分の根本的な若返りが可能になりかねないな。
この実験では都合よく山中3因子をON/OFFする方法としてAAVウイルスベクターが使用されています。このウイルスベクターはすでに遺伝子治療用に人間でも利用実績があります。網膜細胞の「若返り」で緑内障マウスの視力回復、iPS作製過程を利用 米研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News 13 users51イイネ Nature ハイライト:時間を巻き戻す:網膜細胞の再プログラム化によって可能になった老化に関連した視力障害からの回復 | Nature | Nature Research 1 users1イイネ
遺伝子発現をON/OFFするTet-On/Offシステム、人間に安全に投与可能な抗菌剤ドキシサイクリンで遺伝子発現を制御するシステムです。ロシアとかにはもうドキシサイクリンを飲むとホルモンが出るアスリートとかいそうだなー。
(省略されています。全文を読む)
Category:#アンチエイジング・老化抑制技術
2019.11.13
生物学的実年齢(DNAメチル化頻度)を若返らせることに成功。市販の3医薬を1年間投与して2.5年若返る
生物学的実年齢(DNAメチル化頻度)を若返らせることに成功。市販の3医薬を1年間投与して2.5年若返る
近年の研究によりDNAのメチル化度合の測定が実年齢よりも正確に生物学的年齢を測定出来ることが示されつつある。今回、研究者らはこのDNAメチル化(エピジェネティクス的年齢)を回復可能であることを世界で初めて報告したと言っています。
研究では51〜65歳の健康な男性を雇い、第1試験は7名、第2試験は3名で試験を行っています。試験ではヒト成長ホルモンを0.015 mg/kg+DHEA 50mg(糖尿病薬)+ 500mg メトホルミン(糖尿病薬)を毎日飲んでもらい、1年後に分析したところ、DNAメチル化の指標では1年間の治療後に1.5年若返らせることに成功した(2.5年若返ったことになる)とのことです。First hint that body’s ‘biological age’ can be reversed 世界で初めて「生物学的年齢」を若返らせる可能性が示される - GIGAZINE 3 users
(省略されています。全文を読む)
Category:#アンチエイジング・老化抑制技術
2019.08.02
子供を作る前に父親が運動すると子供がメタボになりにくい体質になるというシンプルなマウスを使った実験結果
子供を作る前に父親が運動すると子供がメタボになりにくい体質になるというシンプルなマウスを使った実験結果
運動により父親の精子に含まれる遺伝子のメチル化などの「エピゲノム」が変化し、それが子孫に影響するというエピジェネティクスの研究ですが、予想以上に前の世代の行動が次の世代に影響しているようですね。Paternal Exercise Improves Glucose Metabolism in Adult Offspring | Diabetes
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Category:未分類
2017.05.24
葉酸はDNAのメチル化促進に働く。母体と同様に男性の葉酸摂取量も生まれてくる子供の神経・精神疾患発生率に影響。
葉酸はDNAのメチル化促進に働く。母体と同様に男性の葉酸摂取量も生まれてくる子供の神経・精神疾患発生率に影響。
妊娠前後の女性の葉酸摂取量が生まれてくる子供にさまざまな影響をもたらすことはよく知られてきましたが、子供を作る男性の葉酸摂取量も生まれてくる子供に影響を与えるとの報告がされています。
女性に関しては、不足は良くないという報告がある一方で、過剰摂取もまた様々な問題が報告されており、1日に1000μg以下が望ましいとされています。男性に関しても不足しても、多すぎても良くないとの報告です。
葉酸は「メチル基供与体」として知られ、エピジェネティクスとして知られる遺伝子のメチル化状態に影響を与えることで、子孫の状態に影響を与えうるようです。
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Category:#性・生殖・出産
2016.08.30
改変CRISPR/Cas9で狙った遺伝子を脱メチル化する技術が開発される
改変CRISPR/Cas9で狙った遺伝子を脱メチル化する技術が開発される
健康維持や病気発症におけるDNAメチル化の重要性にも関わらず、自在に特知恵の遺伝子配列のメチル化を制御し、機能を探ったり、治療を行う技術はこれまでありませんでした。今回、群馬大の畑田教授らは、以前に発表していたdCas9-SunTagという技術を特定遺伝子の脱メチル化の効率向上のために改変しました。
具体的な改良としては元のSunTagが5アミノ酸のリンカーで分割された10コピーのGCN4ペプチドから構成されていたのに対し、今回リンカーの長さを22アミノ酸としたところ、9種類の遺伝子で試した結果、7種類の配列で脱メチル化の効率は50%を超え、うち4種類で90%を超えていました。
この技術により「選択的脱メチル化」という新しい種類の治療方法が可能となります。
「メチル化」はエピゲノムとも言われ、ゲノムと異なり生活習慣などの影響を受けて変化し、病気の原因ともなり、また一部は子孫に受け継がれることが分かっています。
この技術、スーパー高校生バイオロジストの片野君が狙っていたような。CRISPR/Casゲノム編集の応用で狙った遺伝子のみのスイッチをONに - 群馬大 | マイナビニュース
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Category:治療技術
2016.03.15
模倣子(ミーム)も遺伝子の修飾を介して子孫に受け継がれることが動物実験で証明
模倣子(ミーム)も遺伝子の修飾を介して子孫に受け継がれることが動物実験で証明
遺伝子(ジーン)と模倣子(ミーム)という考えがあります。これは分かりやすい言葉で言えば「血筋」は子孫に受け継がれるが、「親の習慣や生き方」は(教えたり、一緒に生活したりしないかぎりは)子孫には受け継がれない。というものですが、どうやら「親の習慣や生き方」も遺伝子上に追加情報として含められ子孫に受け継がれるようです。
研究者らは、まったく同じ遺伝子を持つマウス群を2つのグループに分け、片方のグループに6週間にわたり高脂肪食を食べさせて肥満状態にしました。そして、そのマウスの精子や卵子を取り出して以下のような4通りに受精させました。
上記の受精卵は環境や育て親の影響を排除するためにまったく別の正常なマウスに着床させ出産させました。そしてそれらの子供マウスに高脂肪食を与えると、体重増加は (1)>(2)=(3)>(4)となりました。たとえ高脂肪食を食べても遺伝子配列は変化せず上記4種類組み合わせから生まれたマウスはまったく同じ遺伝子配列を持つはずです。
こういった現象は「エピジェネティクス」という分野に相当し近年盛んに研究されています。親の習慣や行動によって遺伝子配列そのものは変わりませんが、それらの習慣や行動により、遺伝子に「メチル化」などの修飾が入ることが分かっており、これが子に精子と卵を介して受け継がれていきます。
こういった現象は以前から明らかにされていましたが↓
今回の研究は別のマウスに代理出産させることで、母乳や腸内細菌、育て方などの環境要因を一切排除し、間違いなく遺伝子上のエピジェネティクス因子が原因であることを明らかにした点が新しいようです。
あなたの体には親の生き方が現れており、あなたの生き方は、子供に受け継がれていることになります。
また、親と子という狭い範囲で書きましたが、「日本人の国民性」といったマクロな特性もエピジェネティクス的に受け継がれていると考えられます。
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Category:遺伝子・バイオインフォマティクス
2015.12.11
Nature Medicine誌の選ぶ2015年の医学の進歩まとめ
Nature Medicine誌の選ぶ2015年の医学の進歩まとめ
今回は比較的メカニズム解明的な話が多いので素人には分かりにくいかもしれません。肥満が「病気」である証拠が見つかり、肝臓・心臓を再生させるための手がかりが見つかり、エボラウイルスワクチンがもうすぐ完成し、癌を克服するための様々な弱点が明らかになりつつあるようです。腸内細菌の状態が癌治療に大きな影響を与えうる証拠が見つかった点は興味深いです。
(1)肥満に遺伝子変異が関連していることが明らかになった。
全ゲノムの分析により、肥満時には肥満に関わる遺伝子(FTO)周辺で、微小な遺伝子変化(SNP)が多く起きていることが明らかになった。この変化によりIRX3、IRX5といった脂肪細胞が出来るのを抑制する働きが妨げられると考えられる。また、この事は痩せた身体の維持に重要な役割を担っているエネルギーを消費する脂肪細胞(ベージュ脂肪(beige fat))の重要性を証明している。なぜならベージュ細胞の維持にIRX3、IRX5は重要な役割を果たす。ベージュ脂肪細胞は大人になると減少することが報告されている。
(2)注射すれば肝臓を再生してくれる特殊な肝臓細胞が見出されたという異なる3件の報告があった。
(3)エボラへの感染を防いでくれるワクチンの開発が最終段階
rVSV-ZEBOVと呼ばれるワクチンのPhase 3研究で有望な結果が得られた。試験では投与後6日後には誰もエボラウイルスに感染しなくなった。このワクチンがどれぐらいの期間、保護機能を発揮するかは引き続いて検証して行く必要がある。
(4)通常は増殖しない心臓の筋肉細胞だが、一部増殖する細胞があり、また増殖させるための物質FSTL1が発見された。
(5)脳にもリンパ管があることが分かった。
これまで脳にはリンパ管は無く免疫から隔離されていると考えられていたが頭蓋骨と脳の間の部分にdCLNsという分子を発現するリンパ管用の管があり、巨大分子が輸送され脳内に入っており、免疫細胞が働いているようだ。
(6)癌細胞が周囲の糖を使い果たすことにより、周囲の免疫細胞を弱らせていることが報告された。
反対にこの変化を逆転させることで癌治療効果を高めることも出来る。また、この作用は免疫チェックポイント抗体医薬の薬効にも関与しているようだ。
(7)DNAメチル化酵素が癌細胞の増殖を抑制する原理が解明された。
(8)プレート上で微小な臓器様組織「オルガノイド」を使う技術が発展した。
(9)ALSの発症の仕組みの一部が解明された。
ALSには様々な原因が存在するが、HREsと呼ばれる遺伝子繰り返しが遺伝子C9ORF72で起きた場合にも発症することが分かっている。この場合の発症の仕組みが解明された。
(10)腸内細菌の種類が癌治療の効果に大きな影響を与えることが証明された。
Bifidobactriumという細菌の糞移植や、経口投与で、近年注目されている癌治療抗体医薬anti-PD-L1の薬効が高まった。これはこの細菌がいることで樹状細胞の働きが高まるためと考えられる。
以下、去年までのまとめNature Medicineの選ぶ2011年の主要な基礎医学の進歩8つ /Amrit不老不死ラボ 1 users 医学分野の最も有名な学術雑誌「Nature Medicine」が選ぶ2012年の重要な研究成果 /Amrit不老不死ラボ 医学界No1の学術誌Nature Medicineが選ぶ2013年の医学の重要な進歩8つ /Amrit不老不死ラボ 1 users9イイネ Nature Medicineの選ぶ2014年の研究の進歩 /Amrit不老不死ラボ
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Category:#エイジング関連まとめ
2014.02.13
性行為の段階での男性のストレス状態は精子のDNAメチル化に影響を与え、生まれた子供の成長を遅らせる
性行為の段階での男性のストレス状態は精子のDNAメチル化に影響を与え、生まれた子供の成長を遅らせる
生まれてくる子供の成長に母親の性行為前、性行為後の身体的・精神的状態が影響を与えることはよく知られています。しかし、父親となる男性の状況がどのような影響を与えるかに関する情報は多くありません。
カナダのレスブリッジ大学の研究者R. MYCHASIUKらは合計20匹のラットを使って、特に脳の発達の影響について研究を行い結果を報告しています。
研究者らはオスのラットに27日間連続で1日2回30分間のストレスを与え、その後、メスのラットと交尾をさせ子供を作らせました。
生まれてきた子供の行動を生後9日目から調べたところ、父親ラットがストレスを受けていた子供ラットはストレスに弱くなり、また行動能力が低いことが分かりました。生後21日目の時点で子供の脳のDNAメチル化を調べたところ、子供の性別に関係無く海馬(記憶を司る部分)のメチル化が増えており、またオスの子供のみで前頭葉のメチル化量が減少していることが分かりました。
DNAがメチル化された部分はそこの部分の遺伝子の働きが抑制される事が分かっています。また、通常と比べてDNAメチル化量が少ないということは、通常は抑制されていないといけない遺伝子が活性化していることを意味しています。
今回の結果は、性行為時の父親のストレス状態がDNAメチル化を通じて子供に伝わり、脳の発達に影響を与えること、特にオスの子供に影響が大きく出ることを示しています。
同じ事が人間でも起きているかもしれません。近年では、このようにDNAメチル化といったDNA配列以外のメカニズムで様々な事が世代を超えて受け継がれ、親の経験や生存環境が子供に影響を与えるメカニズム「エピジェネティクス」の研究が進んでいます。
女性は、生まれてくる子供のためにも夫には優しくした方が良いかもしれません。
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Category:子育て
2012.04.18
血液の遺伝子診断で現在の社会的ランクを80%の正確さで予測出来る。アカゲザルを用いた研究
血液の遺伝子診断で現在の社会的ランクを80%の正確さで予測出来る。アカゲザルを用いた研究
集団で生活する多くの動物では、その集団内での社会的ランクが個々の個体に大きな身体的影響を与えることが報告されています。たとえば社会的ランクが低い個体ほど病気になりやすいなどです、また、長期的・種全体の進化的にも社会的環境は影響を与え、生存率や産む子供の数などが影響を受けることが報告されています。こういった社会的状況から受ける影響はもちろん人間にも多かれ少なかれ当てはまると考えられますが、これまで、いったい社会的ランクの何がどのように身体的影響を生じさせるのかは明らかではありませんでした。
今回、シカゴ大学の研究者らは、サル(アカゲザル)の集団を用いた研究を行い、社会的ランクが遺伝子の働きに短期間で強くしかし可逆的に影響を与えることを発見し報告しました。この研究では、研究者らは10の集団に分かれて暮らすアカゲザルのメス合計49匹を用いて研究を行っています。メスザルの社会は厳格な階級社会であり、また各個体の社会的ランクは状況により変化します。研究者らはそれぞれのメスザルの社会的ランクを集団内での各個体のふるまいによりチェックし、次に血液検査などの検査を行い、社会的ランクと身体的状況に関係があるかを調べました。
すると興味深いこと、社会的ランクに連動して働きの変わる987個の遺伝子が見つかりました。この中には免疫に関わる遺伝子が112個含まれており、社会的ランクが高いほど活発になる遺伝子もあれば、社会的ランクが高い時には働かなくなる遺伝子もありました。
また集団内の特定のサルを隔離したり別の集団のサルを加えたりするなどして人為的にサルの社会的ランクを変化させたところ、社会的ランクの変化に伴い遺伝子の働きも数週間程度の期間で速やかに変化することが分かりました。(すなわち、社会的ランクの高かったメスザルは社会的ランクが高いサルに特有の遺伝子の働きを示していますが、社会的ランクが低くするとそれに応じて社会的ランクが低い個体に特有の遺伝子パターンを示すようになる。)
驚くことに、この社会的ランクと遺伝子の働きのパターンを利用することで研究者らはサルの血液中の遺伝子発現を調べるだけでそのメスザルの社会的ランクを80%の正確さで予測可能であることを報告しています。
また、遺伝子の差以外にも、高い社会的ランクのサルほど血液中にCD8陽性T細胞が多いことが分かりました。このことはガン細胞と闘う場合などに必要な細胞性免疫が強いことを示しています。また社会的ランクが低いほどデキサメタゾン(炎症抑制剤)に対する抵抗性が高く体内が炎症が起きやすい状況にあることが分かりました。先ほど述べた遺伝子の解析でも社会的ランクの高いサルほど炎症に関連する遺伝子(PTGS2、IL8RB、NFATC1など)の働きが低いという結果が出ており、この遺伝子の働きの差が実際の体内の免疫・炎症状態の差を生じさせていると考えられます。その他にも、DNAのメチル化状態も社会的ランクにより変化していました。
今回の結果が人間に当てはまるかどうかが確認されたわけではありませんが、もし当てはまるなら血液検査によりその血液の持ち主がどのような社会的地位にあるのかおおよそ予想が可能かもしれません。
(省略されています。全文を読む)
Category:#診断技術