携帯電話レベルの弱い電磁波によって起こる細胞内シグナルカスケード活性化のメカニズムが明らかになった(Pubmed) 【電磁波の影響】 |
2007/09/02
■携帯電話レベルの弱い電磁波によって起こる細胞内シグナルカスケード活性化のメカニズムが明らかになった(Pubmed)(NewScicentist)【電磁波の影響(6)】
イスラエルの研究者Freidmanらが、携帯電話レベルで細胞内シグナルが起こる仕組みを明らかにしています。
携帯電話から発生する電磁波が健康にどのような影響を与えるかに関しては結論が出ていません。携帯の電磁波がDNAを傷害する影響に関しては、皆無では無いものの、その強さは数年レベルの研究において動物個体、細胞でガンを発生させるほどの影響は無いと報告されています。
またDNAへの影響とは別に、携帯程度の強度の電磁波で細胞内に多くのタンパク質発現変動が起こることも確認されています。しかし携帯電話の電磁波は熱を発生させるほどのエネルギーは無く、この影響がどのようなメカニズムで起こるのかに関してはこれまで明確に分かっていませんでした。これらのタンパク質の変動は細胞の転写活性化とタンパク質の安定性に影響することにより起こると想定され、特に多くの細胞で重要な役割を担っているMAPKカスケードが活性化が知られています。実際に、長い間、細胞を携帯電話の電磁波にさらすと、ERKやp38が活性化することが報告されています。
今回の研究ではなぜERKやp38の活性化が、携帯電話の電磁波で起こるのかについてメカニズムを解析した結果が報告されています。研究者らによると携帯電話レベルの電磁波でも細胞膜のNADHオキシダーゼに作用し、ROS(活性酸素・ラジカルの一種)を生じさせ、この生じたROSが直接MMPs(マトリックスメタロプロテアーゼ)を刺激し、Hb-EGF(ヘパリン結合性EGF)を切断、放出を起こします。この放出されたEGFによりEGFレセプターが活性化され細胞内のERKカスケードが活性化すると考えられるそうです。
MMPs、EGFは細胞内で重要な役割を担っている分子であり、もしこのような反応が携帯電話の使用で生じることがあるのなら生体内の様々な機能に大きな影響を与える可能性があると言えるとお思います。Mechanism of short-term ERK activation by electromagnetic fields at mobile phone frequencies.Biochem J. 2007 Aug 1;405(3):559-68、PMID: 17456048
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