嫌な記憶のみを忘れっぽくし、他の記憶には影響を与えない薬物が発見される。しかも薬局で買える薬に含有される成分だった。
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2013.10.25

嫌な記憶のみを忘れっぽくし、他の記憶には影響を与えない薬物が発見される。しかも薬局で買える薬に含有される成分だった。

 人間生きていれば嫌な事もあるものです。出来ることなら嫌な記憶は早く忘れてしまいたいもの、しかしながら現在の科学では自由に記憶を操作し、都合良く嫌な記憶のみを消し去ることは出来ませんでした。もし嫌な記憶のみを消し去ることが可能になれば、大きなショックを受けた場合の後遺症(PTSD:心的外傷後ストレス障害)の治療に有効な治療方法となります。

 今回、スイスのBasel大学とPsychiatric大学の研究者らは、合わせて2000人以上のヒトの遺伝子情報を比較する手法で、「嫌な記憶」に関係ある可能性のある遺伝子を推定しました。(嫌な記憶がどのようなメカニズムで制御されているかも現在まだ明らかでない)。そして、この推定が正しいかどうかを調べるために、この推定した遺伝子に影響することが知られている市販の薬物をボランティアに投与し、記憶に与える影響を調べました。

 研究者らは40人のボランティア(スイス人平均年齢23歳、男21日、女19人)を雇いました。研究に参加する謝礼には400フラン(1スイスフラン=約100円)を支払いました。

 研究ではボランティアを2つのグループに分け、片方のグループには記憶に影響を与える可能性のある候補薬物を、もう一方のグループには偽の薬を飲んでもらい、それぞれ24枚の「暴力的な写真」「ポジティブな感情を生じる写真」「中立の写真」を見せ、数時間後にそれぞれの写真を思い出せるかどうかという実験を行いました。

 実験は「プラセボ対照ダブルブラインドテスト」方式で行われています。この試験方法では試験が終了するまで、研究者もボランティアも誰が本物の薬を飲んだのかニセモノの薬を飲んだのか分からなくしてあり、思いこみの影響を排除することが出来ます。

 試験の結果、試した薬物の一つ「ジフェンヒドラミン塩酸塩(diphenhydramine)」50mgを1回飲むことで嫌な写真に対する記憶力のみが悪くなり、良い記憶や感情を生まない中立の記憶には影響しないことが分かりました。この結果は、この薬が嫌な記憶のみを忘れっぽくすることを意味しています。

 このジフェンヒドラミン塩酸塩はヒスタミンH1レセプターと呼ばれる種類の薬で総合風邪薬や、鼻炎薬に含まれている薬物です。またこの薬物の飲むと眠くなる性質を生かし、薬局で買える穏やかな睡眠誘導薬「ドリエル」としてこの成分のみを含む薬が販売されています。

 ドリエルには1錠あたり25mg、ドリエルEXには1カプセルあたり50mgのジフェンヒドラミン塩酸塩が含まれています。ドリエルを毎日飲んでいる人は嫌な記憶を忘れっぽくなっているのでしょうか?嫌な記憶を忘れる作用と睡眠誘導作用が同じ成分っていうのも面白い話です。

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