カテゴリー:電磁波の影響 TW↑B



2011.07.08通常使用の携帯電話電磁波はどうにか脳の記憶・学習に影響を与えないレベル /9
2011.07.08携帯電話を使用すると精子の質が下がり血中の生殖ホルモン量に変化が起きる /1
2007.09.02携帯電話レベルの弱い電磁波によって起こる細胞内シグナルカスケード活性化のメカニズムが明らかになった(Pubmed)
2007.03.29携帯電話の使用が男性の生殖能力を衰えさせているかもしれない /9
2003.02.13携帯の電磁波でヒト末梢リンパ球に遺伝子変異が起きる。
2000.03.03電磁波を浴びせるとラットがバカになった


2011.07.08

通常使用の携帯電話電磁波はどうにか脳の記憶・学習に影響を与えないレベル

↑BTW

 携帯電話の電磁波が人体に与える影響に関しては1950年代から繰り返し議論になっています。しかし多くの議論が発癌性などの長期的な問題に関するもので、記憶や学習プロセスなど使っている段階でただちに影響があるかどうかの研究はほとんど行われてきませんでした。今回、ドイツBochumのRuhr大学の神経科学者らが携帯電話の電磁波を浴びた直後の脳神経の学習プロセスへの影響を初めて報告しています。

 実験では、実験用のオスのラットを用いました。これらのラットにSAR値が10W/kg、2W/kg、0W/kg(照射しない)の強度で携帯電話の周波数帯の電磁波を2時間浴びせました。そして直後に脳内で学習や記憶に関わっている海馬の神経細胞を電気生理化学的手法で調べ、LTP、LTDを評価しました。この実験における電磁波の照射はコンピューター制御により行い、ラットに照射したかどうかを気づかれないような環境で行いました。

  • ※LTP・・・・・long-term plasticity
  • ※LTD・・・・・long-term depression
 結果、SAR値10W/kgの照射によりLTPとLTDが影響を受け記憶と学習プロセスに影響を与えていることが分かりました。2W/kg、0W/kgの照射では影響はありませんでした。同時にラット血中のストレスホルモンCORT(corticosteron)、ACTH(adrenocorticotropic hormone)を調べましたが、これらの値は電磁波の照射の有無にかかわらず上昇していました。電磁波では無く実験によるストレスにより上昇したと言えます。ストレスホルモンの分泌も脳の学習プロセスに影響を及ぼしますが、今回の実験では電磁波の照射とストレスホルモンの分泌の影響は無かったことから、今回確認された記憶、学習プロセスへの影響は電磁波の直接影響であるといえます。

 現在販売されているほとんどの3G携帯電話はSAR値2W/kgに抑えられており(日本で販売される携帯のSAR値一覧)、今回示された結果は日常的な携帯電話の利用は脳の学習プロセスに影響を与えないレベルであることを示しているといえます。ただし実験では5倍強い10W/kgの照射により脳の学習プロセスへの明らかな影響が見られています。これらの事は、職業的に電磁波を浴びる人や、特殊な環境においての電磁波暴露が記憶、学習プロセスに影響を与える可能性があることを示しており、注意が必要と言えます。

 今回示された強い電磁波が記憶、学習プロセスに影響を与える詳細なメカニズムは明らかではありません。携帯電話の電磁波が0.1℃以下の局所的な発熱(thermal effect)を起こすことは報告されていますが、これらによる細胞的、機能的、構造的影響は今のところ解明されていません。また、非発熱的影響として、一時的な細胞膜の流動性と透過性の上昇が、イオンチャネルの変化と代謝に影響している可能性もあると思います。これらの影響が脳内の学習プロセスに影響しているのかもしれません。

Mobile phone derived electromagnetic fields can disturb learning(携帯由来の電磁波は学習を妨げうる)Alphagalileo

Electromagnetic Field Effect or Simply Stress? Effects of UMTS Exposure on Hippocampal Longterm Plasticity in the Context of Procedure Related Hormone Release(電磁波の効果、単なるストレス?携帯電話の電磁波が海馬長期可塑性に与える影響とホルモン放出の影響)PLoS ONE 6(5): e19437(全文)

 Keyword:ストレス/29


2011.07.08

携帯電話を使用すると精子の質が下がり血中の生殖ホルモン量に変化が起きる

↑BTW

 不妊治療を受けている男性など、精子の質が悪いことが分かっている男性は少なくとも携帯電話の使用を制限すべきかもしれません。

オーストラリアのGraz医科大学とカナダのQueen's大学の研究者らが最近発表した。
Impact of cell phone use on men's semen parameters.(携帯電話の利用と男性の精子のパラメーター)Andrologia. 2011 Mar 28.PMID:21486411
という報告では、1993年から2007年の間に不妊治療に訪れた2110人の男性の精液や血液を検査しています。そして患者の聞き取り調査を元に携帯電話を使っているAグループと使っていないBグループに分け比較したところ、精子の形状に関してAグループは68%に精子の病理学的な形状が見つかったのに対し、Bグループでは58.1%にしか見られないことが分かりました。

 また、血液中のテストステロン(T)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体ホルモン(LH),プロラクチン(PRL)などの生殖ホルモンを調べると、携帯電話を使っている患者はテストステロン(T)レベルが高い傾向にあり、一方、黄体ホルモン(LH)は低い傾向にあることが分かりました。FSH量とPRL量には差は見られませんでした。研究者らは当初、携帯電話利用により影響は無いことを証明しようと思って研究を始めましたが、結果として影響があることを証明することになってしまった。とニュース記事で語っています。研究者らは携帯電話の電磁波が生殖ホルモンレベルと受精能力両方に影響を与えている可能性を考えているようです。

A(携帯電話を使っている)B(携帯電話を使っていない)
調べた人数991名1119名
異常精子の検出比率68%58.1%
テストステロン(T)-
黄体ホルモン(LH)-
卵胞刺激ホルモン(FSH)--
プロラクチン(PRL)--

このような、携帯電話の利用と精子の質の関連に関してはこれまでにも報告されています。2008年にアメリカの研究者がFertility and Sterility(受精と不妊)という雑誌に発表した
Effect of cell phone usage on semen analysis in men attending infertility clinic: an observational study(不妊治療を受けた男性の携帯電話の利用と精子の解析) Fertility and Sterility Volume 89 Issue 1 January 2008 Pages 124-128
では、361人の男性を携帯電話の利用時間により(A)非使用、(B)1日2時間弱、(C)1日2−4時間、(D)1日4時間以上。に分類して精子の数、運動性、生存率、形状を調べたところ、携帯電話の使用頻度が上がると精子の品質が悪くなり、数が減り、また、精子の運動性と生存率が下がり、形状異常の確率が上がることを報告しています。

生殖ホルモンの量の変化と精子の量・質の関係に関しては、携帯電話の利用に関わらず相関関係があるという報告が2007年にアメリカ、ボストンの研究者によりなされています。
Relationships between serum hormone levels and semen quality among men from an infertility clinic(不妊治療に訪れた男性における生殖ホルモンレベルと精子の質) J Androl. 2007 May-Jun;28(3):397-406. Epub 2006 Nov 29.PMID:17135633
この報告ではFSH、LH、Inhibin B、テストステロンなどのホルモン量と精子の質に関連があるとしています。

 携帯電話を使用していない人と携帯電話をしている人では生活環境が異なる可能性もあり、これらの悪影響の原因が携帯電話の電磁波であると断定するにはさらなる研究が必要と言えますが、少なくとも携帯電話が必要無い生活を送れば、精子の質は良くなるとも言えます。

情報元:

  • Cell phone use may reduce male fertility(EurekAlart)
  • Cellphones can reduce fertility by 30 per cent: Survey(Times_of_Indea)
単語:
  • Reproductive hormones(生殖ホルモン)
  • Pituitary Gland(脳下垂体)
  • LH; Luteinizing hormone(黄体形成ホルモン)

 Keyword:精子/23 テストステロン/8


2007.09.02

携帯電話レベルの弱い電磁波によって起こる細胞内シグナルカスケード活性化のメカニズムが明らかになった(Pubmed)(NewScicentist)

↑BTW

イスラエルの研究者Freidmanらが、携帯電話レベルで細胞内シグナルが起こる仕組みを明らかにしています。

携帯電話から発生する電磁波が健康にどのような影響を与えるかに関しては結論が出ていません。携帯の電磁波がDNAを傷害する影響に関しては、皆無では無いものの、その強さは数年レベルの研究において動物個体、細胞でガンを発生させるほどの影響は無いと報告されています。

またDNAへの影響とは別に、携帯程度の強度の電磁波で細胞内に多くのタンパク質発現変動が起こることも確認されています。しかし携帯電話の電磁波は熱を発生させるほどのエネルギーは無く、この影響がどのようなメカニズムで起こるのかに関してはこれまで明確に分かっていませんでした。これらのタンパク質の変動は細胞の転写活性化とタンパク質の安定性に影響することにより起こると想定され、特に多くの細胞で重要な役割を担っているMAPKカスケードが活性化が知られています。実際に、長い間、細胞を携帯電話の電磁波にさらすと、ERKやp38が活性化することが報告されています。

今回の研究ではなぜERKやp38の活性化が、携帯電話の電磁波で起こるのかについてメカニズムを解析した結果が報告されています。研究者らによると携帯電話レベルの電磁波でも細胞膜のNADHオキシダーゼに作用し、ROS(活性酸素・ラジカルの一種)を生じさせ、この生じたROSが直接MMPs(マトリックスメタロプロテアーゼ)を刺激し、Hb-EGF(ヘパリン結合性EGF)を切断、放出を起こします。この放出されたEGFによりEGFレセプターが活性化され細胞内のERKカスケードが活性化すると考えられるそうです。

MMPs、EGFは細胞内で重要な役割を担っている分子であり、もしこのような反応が携帯電話の使用で生じることがあるのなら生体内の様々な機能に大きな影響を与える可能性があると言えるとお思います。

Mechanism of short-term ERK activation by electromagnetic fields at mobile phone frequencies.Biochem J. 2007 Aug 1;405(3):559-68、PMID: 17456048

 Keyword:活性酸素/42


2007.03.29

携帯電話の使用が男性の生殖能力を衰えさせているかもしれない

↑BTW

不妊治療の学術専門雑誌「Fertility and Sterility」でCleveland Clinicの研究者が報告したところによると不妊治療を受けている350人の男性を調査したところ、毎日4時間以上ケータイを使用している男性で、精子の質、量が低下していることが確認されたそうです。

textually.orgによると同様の報告が以下に示すように多数あるそうです。
Mobile Phones Could Put Mens' Sperm Quality At Risk-Study(リスク研究における携帯電話と男性の精子の質)
Survey: Exposure to mobile phones and sperm count(携帯電話の使用と精子の数)
Mobile phone-like waves damage mice sperm(携帯電話の電磁波がマウスの精子にダメージを与える)
Mobiles 'could cut male fertility'(ケータイが男性の生殖能力を奪う)
Smart pants for Cell-Phone users(ケータイユーザーのための電磁波防護パンツ)


2003.02.13

携帯の電磁波でヒト末梢リンパ球に遺伝子変異が起きる。

学術雑誌「BioElectroMagnetics(生物電磁波学)」2003年2月号より持ってきました。
題名は「Exposure of human peripheral blood lymphocytes to electromagnetic fields associated with cellular phones leads to chromosomal instability」
日本語に訳すと「ヒト末梢リンパ球に携帯電話の電磁波をあてると染色体の不安定化を引き起こす」です。
概略を訳したのを以下に示します。
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携帯電話から生じる電磁波が健康に害を与えるかどうかは現在議論中である。我々はヒト末梢血リンパ球(PBL)を体外に取り出し830MHzの電磁波を持続的に与えた場合に染色体の欠損や増加を引き起こすかを調べた。34.5℃〜37.5℃に保ったヒト末梢リンパ球を1.6〜8.8W/Kgの様々な強さの電磁波に72時間さらした。
電磁波の量が増えるに比例して17番染色体の数の異常が増加した。すなわち電磁波が遺伝子毒性を示していた。体細胞における染色体数の変異はガンのリスクを上げることが知られており、これらの研究は将来の電磁波被爆ガイドラインに考慮に入れられるべきである。

2000.03.03

電磁波を浴びせるとラットがバカになった

↑BTW

僕の作っている別サイトで公開しています
(Acute exposure to pulsed 2450-MHz microwaves affects water-maze performance of rats.(Bioelectromagnetics vol.21 p.52-56))





Cation!!注意:このページには動物実験などで得られた研究段階の情報が含まれています。これらはなんら、人間に適用した時の効果を保証するものではなく、これらの情報を元にとった行動によりいかなる不利益を被っても管理人は一切責任を負いません。このページの話はあくまで「情報」としてとらえてください。