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2014.03.28
ガン細胞の「私を食べないで」シグナルCD47をマスクする新しい治療方法開発
人体には正常に機能しなくなった細胞を除去するするための仕組みがあります。普通に考えると無限に増殖を始めたガン細胞はこの免疫の仕組みで除去されそうなものです。ガン細胞はなぜこの仕組みから逃れて体内で増殖することが出来るのでしょうか?
今回、スタンフォード大学メディカルセンターのStephen B. Willinghamらはガン細胞が免疫から逃れる仕組みを解明し、新しいガン治療の試みを動物実験で成功させています。
この治療ではCD47という細胞表面にあるタンパク質の目印を使います。この目印は体内で「私を食べちゃダメ」という意味を持っています。正常な細胞はこの目印を使って免疫細胞に攻撃されるのを防いでいますが、ガン細胞はなんと仕組みを悪用し、CD47を大量に持つことで免疫細胞に攻撃されなくなっていることが分かりました。
そこで研究者はガン細胞表面のCD47を隠してしまうような抗体医薬を作製し投与することにしました。すると、投与した抗体医薬は図に示すようにガン細胞表面のCD47に結合し隠します。結果、体内の免疫細胞はガン細胞のCD47を見つけられず攻撃出来るようになりました。
マウスの体内にわざと人間の膀胱ガンを移植して行ったモデル実験では強いガン抑制効果が見られました。抗体を投与しない場合は移植した全てのマウスでガン細胞がリンパ節に転移していましたが、抗体を投与することにより、10匹中1匹しかリンパ節への転移が見られずガンが小さくなっていました。また、マウスの生存率が上昇していました。
CD47はガン細胞だけでなくマクロファージや樹状細胞などといった免疫細胞も持っており、これらの細胞も攻撃を受けてしまう可能性がありましたが、マウスのモデル実験では大きな副作用は確認されませんでした。恐らく、これらの細胞は次々に作られるため大きな問題にならなかったと思われます。
今回紹介した研究者は抗体医薬を使ってCD47を隠しましたが、低分子化し飲み薬にしたタイプの薬での検討をStem Cell Therapeuticsという会社が開発しており、ヒトへの試験的投与試験が始まっています。
Category:ガン・腫瘍
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