これが次世代がん治療薬「免疫チェックポイント調整抗体医薬」のパワーだ。 (カテゴリー:ガン・腫瘍(記事数:48))


2016/03/18

これが次世代がん治療薬「免疫チェックポイント調整抗体医薬」のパワーだ。


(Atezolizumab versus docetaxel for patients with previously treated non-small-cell lung cancer (POPLAR): a multicentre, open-label, phase 2 randomised controlled trial.Lancet. 2016 Mar 9. pii: S0140-6736(16)00587-0. doi: 10.1016/S0140-6736(16)00587-0. PMID:26970723)より
「ついにガンが治る時代になった」ってフレーズ聞いたことがあるでしょうか?これは最近、開発が進んでいる「免疫チェックポイント調整型抗体医薬」の強力な効果から言われていることです。上記のグラフは新しく開発が進んでいるPD-L1という生体内で免疫を調製するタンパク質に対して作用する薬を悪性度の高い「非小胞肺がん」患者で試した臨床試験結果です。

 縦軸は生存率を%で示しており治療効果にあたります、右に行くほど治療してから日数が経過しますが、全員が生存していた100%から徐々に生存率が低下していくのが分かります。赤色が従来の抗がん剤治療、青色が新しく開発が進むPD-L1に対する抗体医薬「Atezolizumab」の治療効果です。

 こういった試験では生存率が50%を切るまでの期間をよく比較に使いますが、従来の抗がん剤で治療した場合は9.7ヶ月で半分が亡くなるのに対し、Atezolizumabでは12.6ヶ月かかっています。この場合「3ヶ月延命させた」と言えます。

 そして注目してもらいたいのがグラフの右端です。従来の抗がん剤では生存率が低下し続けるのに対し、Atezolizumabでは16ヶ月を超えたあたりから生存率が下がらず新たに亡くなる人が出なくなっているのが分かります。これが新しい免疫チェックポイント型抗体医薬の特徴です。体内のガンと戦う免疫機能がガン細胞の増殖と同じぐらいになり、それ以上病状が進行しないか、回復に向かうのです。

 免疫チェックポイント薬は今回紹介したPD-L1のほかに、すでにPD-1CTLA-4に対する薬が開発されています。既に開発されている後者の2つは同時に使うことでさらに強い薬効が得られることが知られており、この手の薬は従来の抗ガン剤と異なり複数の薬を併用して薬効を増強する効果が期待出来ます。

 問題は値段です。それぞれの薬は「よく効くから」という理由で製薬会社が1年間の治療あたり1000万円以上の価格を付けています。現在は保険適用されていますし、高額療養費控除の対象になりますから患者の負担はわずかですが、これらの薬が多くのがん患者に使用されるようになったら国の医療費負担は膨大になってしまいます。間違いなく近い将来に、全額自己負担の高度先進医療に指定されるなどして、国の負担を減らす方向に進むでしょう。そうなれば、現在は安く加入できる保険の高度先進医療特約もきわめて高額になるに違いありません。

 既に海外などではこれらの新しく開発された薬はお金持ちしか使用出来ない薬として扱われています。医療技術が進みガンは直す選択肢は増えていますが、誰でもこの新しい薬を使用出来るようにするためには今の医療の仕組みを少し変える必要があるでしょう。

  • Atezolizumab versus docetaxel for patients with previously treated non-small-cell lung cancer (POPLAR): a multicentre, open-label, phase 2 randomised controlled trial.Lancet. 2016 Mar 9. pii: S0140-6736(16)00587-0. doi: 10.1016/S0140-6736(16)00587-0. PMID:26970723

Category:ガン・腫瘍

 Keyword:【タンパク質/45】 【PD-1/7】 【オプジーボ/3】 【Opdivo/3】



■ ■ ■ コメント ■ ■ ■

いいっすね!=114
001 [03/18 16:43]10年選手★1:同感です。医療の進歩はブレイクスルーがあれば一気に変わります(C型肝炎の治療などは劇的に変わりましたね)。もしそれが一部の富裕者のみが享受できるだけに留まるなら、社会全体から見たら大きな損失です。 (29)
002 [03/18 23:45]ぇー@InfoWeb:効くから高い、というのは可哀想な。スケールアップした際のちょっとした糖鎖の違いで認証取り直させられたり、セルライン選別が大変だったり、精製も品質管理も低分子医薬よりお金かかるし・・・。技術が進んで廉価になっていくとは思うけど (27)
003 [03/19 08:02]フライングげっと@Biglobe:そんな事より、快感の絶頂で安楽死出来る薬を作ったほうが良い気がする。エイズだの交通事故とかあるし (12)
004 [03/20 13:08]あいす@So-net:そそ、効くから高いってのは違うような。抗体医薬の作り方を考えたら仕方ないんじゃないかな? ある種、オーダーメイド医療に近いんだもの。 (8)
005 [03/21 02:22]通りすがり@OCN:この価格設定が妥当なのか判断できないが、高すぎるならば、この価格設定を社会的に受忍して良いものか。特許権の乱用となれば特許期間の短縮が必要だと議論されてしまうな。 (4)

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