2011.10.26
体重が増えすぎ肥満になってしまう原因には様々な要因が考えられる。最も一般的な原因は食べ過ぎなどの行動的な原因によるものかもしれないが、それ以外にも遺伝的に太りやすい家系や、内分泌系の病気が原因となり太ってしまうことが知られているが、これに加え肥満を引き起こすウイルスの存在が報告されている。
アメリカの研究者らは502名のボランティアを雇い、体重やBMIの測定とAd-36(アデノウイルス36)に感染しているかどうかの調査を行った。すると驚くべきことに、感染していなかった378名のBMIが35.8だったのに対し、感染していた124名の平均BMIは44.9と、ウイルス感染者が肥満傾向にあることが明らかになった。
【502名のボランティアの結果】
平均BMI | |
Ad-36に感染している人(124名) | 44.9 |
感染していない人(378名) | 35.8 |
また、片方だけAd36に感染している双子を28組探しだしBMIを比較すると、感染していない人の平均BMIが24.5だったのに対し、感染している人の平均BMIは26.1と、双子であってもウイルス感染により肥満傾向になることが明らかになった。
【28組の双子(片方のみウイルス感染している)の結果】
平均BMI | |
Ad-36に感染している人 | 26.1 |
感染していない人 | 24.5 |
別の研究グループも同様の結果が子供にも当てはまることを報告している。この研究では8才〜18才の子供124名を調べたところ、Ad-36に感染している子供が19人見つかったが、19人中15人が肥満傾向であったそうだ。この19名の平均体重は、感染していない子供平均体重よりも15キロも重かった。
Ad-36ウイルスはラットを用いた実験により、感染すると脂肪前駆細胞(脂肪の元となる細胞)が増加し、かつ、脂肪前駆細胞が脂肪に変化しやすくなることが分かっている。また、インスリンの感受性が上がり食物より摂取した脂質を脂肪として蓄えやすくなるようだ。これらの現象の結果として、感染すると血液中のコレステロールとトリグリセリドの値は低くなる(血液中から脂肪細胞に取り込まれやすくなるため)。
さらに、このウイルスに感染することにより脳内のノルエピネフリン濃度が増え、全身のコルチコステロン量が低下することから、Ad-36は脂肪細胞に作用するだけでなく様々な効果で肥満を引き起こす働きがあるようだ。一緒に暮らしている人が太っていると別の人も太りやすくなるという現象が噂話として口にされる事があるが、この現象はウイルス感染が引き起こした現象なのかもしれない。
このような肥満を引き起こすウイルスはAd-36以外にもいくつか知られている。
【これまで知られている肥満を引き起こすウイルス】
ウイルスの名前 | 確認された動物 |
Canine distemper virus | マウス |
RAV-7(Rous-associated virus type 7) | ニワトリ |
Borna virus | ラット |
Avian Adenovirus SMAM-1 | ニワトリ、ヒト |
Ad-36 | ニワトリ、マウス、サル、ヒト |
- Human adenovirus 36 induces adiposity, increases insulin sensitivity, and alters hypothalamic monoamines in rats.Obesity (Silver Spring). 2006 Nov;14(11):1905-13.PMID:17135605
- Human adenovirus-36 is associated with increased body weight and paradoxical reduction of serum lipids. International Journal of Obesity (2005) 29, 281–286 PMID:15611785
- Adenovirus 36 and obesity in children and adolescents. Pediatrics. 2010 Oct;126(4):721-6. Epub 2010 Sep 20.PMID:20855385
Category:ダイエット・メタボリックシンドローム
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