高齢の父親から生まれた人ほど細胞分裂の回数券「テロメア」が長い傾向。長生き出来るかも
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2012.06.18

高齢の父親から生まれた人ほど細胞分裂の回数券「テロメア」が長い傾向。長生き出来るかも

 この研究を発表したのはアメリカ・ノースウェスタン大学の研究者ら。テロメアとは染色体末端に存在するDNAの繰り返し配列で、細胞分裂の時に遺伝子が壊れないように保護する働きが知られています。テロメアは細胞が分裂するたびに徐々に短くなり、テロメアが短くなりすぎた細胞は分裂出来なくなります。これを「細胞老化」と言い、こういった性質からテロメアは「細胞分裂の回数券」のようなものと考えられています。テロメアの長さは同じ年齢でも人によって長さが異なり、テロメアが短い人ほど残り寿命が短い傾向にあることが報告されています。

 テロメアは細胞分裂に伴って年齢と共に短くなっていくことが知られていますが、一つだけ例外が知られています。それは精子を作り出す臓器「精巣」の中です。精巣の中ではテロメアを増やす働きを持つ酵素「テロメアーゼ」が働いており、面白いことに高齢の人の精子ほどテロメアを多く持っていることが報告されています。ちなみに、女性の体内にある卵子のテロメアの長さは人生を通じて長さがほとんど変化しないことが報告されており年齢に逆行してテロメアが長くなるのは精巣・精子に限られた特殊な現象のようです。精子は卵子と受精し融合し子孫を作り出しますが、これまで精子のテロメアの長さが子孫のテロメアの長さに関係するかどうかは調べられたことはありませんでした。

 今回、研究者らはフィリピン・セブシティーの人々の協力を得て研究を実施しました。1983年〜1984年に出産した女性3327人の記録からたどり、2005年の段階で36-39歳になっていた母親の血液を調べテロメアの長さを確認するとともに、聞き取り調査でそれぞれの母親自身は何歳の父親から生まれたかを調べました。また、母親から生まれた子供(現在21-23歳)の血液サンプルも集め、そちらもテロメアの長さを調べました。そうして全部で1779人の母親と、その子供234人のテロメアの長さを調べたところ、高齢の父親から生まれた母親ほど長いテロメアを持っていることが分かりました。またその母親の子供も長いテロメアを持っていました。

 これらの事は長いテロメアを持つ高齢の男性の精子から生まれた子供は長いテロメアを受け継いでおり、またその長いテロメアはさらに次の世代の孫まで伝わることを示しています。他の研究でテロメアが長いほど寿命が長い傾向が報告されていることと併せて考えると、高齢の男性から生まれた子供、その孫は寿命が長い傾向があると言えます(ただし、この事はまだ実際に多数の人を調べて確認されているわけではありません)。この研究を行った研究者らは、次に高齢の男性から生まれた子供の健康状態について調べてみたいと語っています。

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