脳内のマイクロRNA「miR-7」「miR-671」を除去する機能が低下すると、不要情報を遮断することが出来なくなり、神経精神活動に影響が出る。
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2017.08.25

脳内のマイクロRNA「miR-7」「miR-671」を除去する機能が低下すると、不要情報を遮断することが出来なくなり、神経精神活動に影響が出る。
New potential mechanism for treating neuropsychiatric disorders

 脳の活動は、神経ネットワーク(回路)と、各種脳神経ホルモンの量によって決まると一般的には考えられていますが、著名な学術雑誌Sienceに、脳内のマイクロRNA(miRNA)が精神活動に影響を与えていることが報告されています。

 研究を発表したのはドイツの研究者ら。miRNAは近年盛んに注目されており、血中を浮遊する比較的短いRNAであり、mRNAのように自らタンパク質をコードしておりませんが、他の遺伝子の発現を制御する機能を持ち細胞、臓器間をつなぐシグナル因子として、各種メカニズム、疾患の発症に関わっていることが報告されています。(これらは昔は「ゲノム中のジャンク配列」と思われ、不要だと思われていた部分です)

 一方、今回の研究の主役は環状RNA(circRNA)。これはヒトやマウスの脳内に大量に存在している。環状のRNAで、マウスとヒトでほとんど同じ配列であることから進化の早い段階から保存されている重要な機能を持つと考えられていましたが、その機能はよく分かっていませんでした。今回、研究者らが環状RNAの一つCdr1as(別名CiRS-7)を作れないマウスを遺伝子操作により作り出したところ、このマウスは行動障害を起こすことが分かりました。

 調査の結果、このCdr1asはマイクロRNA「miR-7」や「miR-671」を70個以上吸着する能力があり、Cdr1asを除去したマウスの脳ではmiR-7、miR-671の量が増えて、通常とは異なる状態となっていたそうです。すなわち正常な状態ではCdr1asがこれらのマイクロRNAを吸着して脳内から除去するスポンジとして働いており、これが正常な精神・行動活動に必要であると考えられます。

 不要情報が除去出来成ることは様々な精神疾患の原因の一つと考えられており、今回見つかった新しいメカニズムを利用した新しい治療方法が開発出来るかもしれません。

 RNAは昔はDNAから転写され、タンパク質を作るための設計図として働くとのみ理解されていましたが、近年の研究では今回紹介したmiRNA、circRNAのようにタンパク質の設計図ではない様々な機能を持つ分子が存在することが分かり生命の奥深さの代表格となっています。

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