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2012.07.03
「アトピー」発症メカニズムが解明され、このメカニズムの遮断薬が開発予定。ぜんそく治療薬として開発中の薬がアトピー性皮膚炎に効く可能性も。
アトピー性皮膚炎(Astopic Dermatitis)は「かゆみ」を伴った皮膚疾患で、普通のアレルギーと異なり、炎症の元になる物質に触れなくても持続的に炎症が続くことを特徴とする。似た症状を起こす疾患として他にぜんそく(Bronchial Asthma)が知られるが、これらの疾患で炎症が長く続いてしまうメカニズムは分かっていなかった。
今回、日本の佐賀医科大学の研究者らはアレルギーを起こす物質「アレルゲン」により起こった炎症が、アレルゲンが無くなった後も皮膚で持続的に炎症を起こす仕組みを解明し発表した。以下に解明されたメカニズムの概要を示す。
今回発見されたキーとなる物質はペリオスチン(Periostin)という物質である。皮膚にアレルゲンが入ってくると、外界からの異物を見つけ出す抗原提示細胞(APC)が異物を攻撃する実行部隊であるT細胞に異物への攻撃を指示する。指令を受けた未熟T細胞は攻撃を指示することの出来るTh2細胞(ヘルパーT細胞)に変化する。このTh2細胞はIL-4やIL-13といったサイトカイン(生体内の情報伝達物質)を放出し免疫反応(特にIgEなどの抗体産生)を誘導する。
IL-4やIL-13は免疫反応を起こすと同時に、皮下に存在するファイブロブラストに作用しペリオスチン大量に作らせることが分かった。アトピー性皮膚炎患者の皮膚を調べると普通の人よりもペリオスチンが4倍多く存在していた。ペリオスチンは皮膚細胞「ケラチノサイト」表面のα5インテグリンに結合し、免疫を刺激するサイトカインを放出させるため、アレルゲンが無くなった後も免疫反応が起こり続ける。
マウスとダニのアレルゲンを用いた実験では新しいアトピー性皮膚炎治療方法の可能性を感じる結果が得られている。例えば、ペリオスチンを持たない遺伝子改変マウスでは持続的な皮膚炎は起こらなかった。そして、インテグリンに対する抗体やペリオスチンに対する抗体を投与することで炎症が持続するのを抑えることが出来た。人間の持つペリオスタチンを無くすことは難しいかもしれないが、マウスに行ったようにインテグリンやペリオスタチンに対する抗体を投与するなどの方法でこの循環を止めることが出来ればアトピー性皮膚炎を治療することが出来るかもしれない。
研究チームはマウスの実験で効果が確認出来たペリオスチンに対する抗体を作り2年以内に人間での治療を試みるつもりだと語っているそうだ。また「ぜんそく」治療薬としてIL-13に対する抗体医薬をロッシュ社が既に開発中である(「Lebrikizumab」という名前)。このぜんそく薬がアトピー性皮膚炎に効果がある可能性もあるかもしれない。
Category:免疫・アレルギー・自己免疫疾患
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