幼児が頻繁に具合が悪くなる理由が解明される。TGFβの働き過ぎ
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2012.08.21

幼児が頻繁に具合が悪くなる理由が解明される。TGFβの働き過ぎ

 なぜ幼児・子どもは頻繁に具合が悪くなるのでしょうか。ミシガン医科大学の研究者らがそのメカニズムを解明して報告しています。これまで「歩くこと」「話すこと」と同様に単に「ウイルス・細菌と戦う能力」も大人にならないと身につかないためと考えてきましたが、この考えは少し違うようです。

 最新の研究によると、幼児の身体でもウイルス・細菌と戦う能力はすでに出来上がってはいるようです。ただ、その働きはブロックされていて、うまく機能しないようなのです。この妨害物質はTGFβと言う名前の物質です。TGFβは免疫を抑制する働きを持っており、特に細菌やウイルスを撃退するナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きを妨害します。どうやら、幼児の身体ではTGFβが働きすぎるためにNK細胞がうまく増えて成熟することが出来ず、結果として細菌やウイルスに感染し頻繁に具合が悪くなるようなのです。

 実験的にTGFβに影響されないNK細胞を持つマウス(TGFβ受容体欠損マウス)を用いて実験を行ったところ、この特殊なマウスでは幼児期から十分NK細胞が働き、幼児期でも感染症を起こすことはありませんでした。これらのメカニズムを利用することで幼児が頻繁に具合が悪くなるのを防止出来るかもしれません。

 しかし一方で、幼児期にTGFβが過剰に働いて免疫を抑制しているのには重要な理由がある可能性も知られています。例えばTGFβは「免疫を抑え」ますが、幼児期にTGFβが全く無い実験動物では全身で炎症が起きることが知られています。幼児期にTGFβがしっかり働くことにより免疫が体外から入ってきた細菌・ウイルスなどの異物のみを攻撃し自己の身体を攻撃しないように制御していると考えられています。さらに、幼児の食物アレルギーが問題になっていますが、幼児にTGFβをさらに与えることでアレルギー発症を防ぐ研究を行っているグループもあります(ちなみに母乳中にはTGFβが豊富に含まれている)。このようにTGFβは単に幼児の具合を悪くさせる悪者というわけでは無いようです。幼児が頻繁に具合が悪くなるのは健康な人体を作るために必要なのかもしれません。

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