「幸せ」を感じやすい遺伝子が見つかった。ただし女性のみ。
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2012.09.05

「幸せ」を感じやすい遺伝子が見つかった。ただし女性のみ。

 以前に行われた大勢の双子を分析した研究において、幸せを感じやすい家系が存在することが報告されています。この結果は、遺伝子の種類により幸せの感じやすさが決定されていることを示していますが、具体的にどの遺伝子が「幸せの感じやすさ」に関わっているかは分かっていませんでした。今回、アメリカ南フロリダ大学の研究者らがMAOA(monoamine oxidase A)という遺伝子と「幸せの感じやすさ」に関係があることを見つけ出し報告しています。遺伝子診断であなたがどれぐらい幸せを感じやすいか判定出来るのです。

■調査方法
 今回の研究では100の地域に住む345人分(全体のうち21%が貧困層。25%が中上流の教育と収入)の遺伝子を調べ。「自分がどれぐらい幸せを感じているか」の聞き取り調査を行いました。また同時にほほの裏を綿棒のようなものでかきとってもらい採取した少量の細胞を使いMAOA遺伝子のタイプを調べました。遺伝子の分析はMAOA遺伝子の発現制御領域(プロモーター)であるVNTRを増幅出来るプライマー(5-CCCAGCCTGCTCCAGAAACATG-3/5-GTTCGGGACCTGGGCAGTTGTG-3)を使用して行われました。

■調査結果
 MAOA遺伝子はX染色体上にあるので、女性は2セット、男性は1セット持っています(X染色体の数だけ持っている)。以下はMAOA-LというタイプのMAOA遺伝子を持っている数ごとに集計した幸せ度の平均値を表にしたものです。

女性(193人)
全体の中の比率自己申告の幸せ度
MAOA-Lを2つ持つ17.1%5.83
MAOA-Lを1つ持つ41.5%5.5
MAOA-Lを持っていない41.5%5.3

男性(152人)
全体の中の比率自己申告の幸せ度
MAOA-Lを2つ持つ--
MAOA-Lを1つ持つ34.2%5.23
MAOA-Lを持っていない65.8%5.24

 女性においては、MAOA-L遺伝子を多く持つ人ほど「自分は幸せ」と思う傾向が強いことが分かりました。評価は参加者の実際の生活状況(年齢、性別、種族、教育、収入、結婚の有無。職の有無、精神病、宗教、薬物乱用歴)などの影響が出ないように考慮して行われているため、この結果は「MAOA-Lを持つほど幸せな生活が出来る。」というわけでは無く、「MAOA-L遺伝子を持つほど、同じ生活をしていても幸せを感じている」ことを意味しています。一方で、男性ではMAOA-L遺伝子の保有数と「幸せの感じやすさ」に関連性は見られませんでした。

 ところでなぜ女性にのみで関係が見られるのでしょうか?研究者は男性が多く持つホルモン「テストステロン」がMAOAの幸せを感じる作用を打ち消している可能性があると考えているようです。テストステロンは男性において思春期に入ると増えるため、男性は思春期前は思春期後より幸せを感じやすいのかもしれません。

参考:
 MAOAは脳内ホルモン「セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン」の分解に関わっている酵素の遺伝子です。MAOA-Lタイプの遺伝子はMAOA遺伝子の中でも働きが弱い酵素を作り出します。すなわち、この遺伝子を持つ人は分泌された脳内ホルモンの分解がゆっくり起こっていると予想されます。脳内ホルモンの分解が遅いことと幸せの感じやすさが関連するメカニズムは分かっていませんが、この遺伝子の種類は既に「アルコール依存症」や「凶暴性」、「社会的不適応」といった症状の生じやすさに関連があることが報告されており、精神の働きに深く関連している遺伝子のようです。

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 Keyword:テストステロン/9 アルコール/26




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