「ダイエット」による健康の良い効果は「体重減少」の結果では無く「空腹を感じること自身」の効果のようだ
カテゴリー:ダイエット・メタボリックシンドローム(記事数:90)

↑B

2013.04.25

「ダイエット」による健康の良い効果は「体重減少」の結果では無く「空腹を感じること自身」の効果のようだ

 必要な栄養素を十分に取りつつ食事量を減らすいわゆる「ダイエット」が健康に様々な良い影響を与えることが分かっています。最もよく知られた効果は老化防止作用であり、また、最近ではアルツハイマー病の進行を遅らせる効果があることも報告されています。

 これらの作用はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか?ダイエットをすると身体の中の余分な脂肪が減り、血液中のコレステロールが減りますので、こういった現象が健康に良い効果をもたらす。というのはもちろんですが、どうやら「空腹を感じること自身」が健康に良い効果を与えるようです。

 この研究を行ったのはアメリカ・ハーバードメディカルスクールのInga Kadishらの研究チーム。研究者らはマウスを用いて実験を行いました。動物が空腹を感じるのは、胃が空になった時に胃から「グレリン」というホルモンが血中に放出されるためです。このホルモンは血管を経由し全身に行き渡ることで、脳に「空腹」を感じさせるなど様々な作用を示します。

 研究者はアルツハイマー病になりやすい特殊なマウスを使い、マウスを3つのグループに分け、1つめのグループは普通に飼育、2つめのグループは普通に飼育しつつ毎日グレリンを投与、3つめのグループはダイエット状態で飼育(食事量20%制限)しました。

グループ1通常飼育
グループ2通常飼育+グレリンを投与
グループ3ダイエット(食事量20%制限)

 しばらく飼育した後に、マウスに迷路を脱出させるテストをさせたところ、ダイエットを行ったマウスは通常飼育のマウスよりも23%早く迷路を脱出しました、また、グレリンを投与したマウスも通常飼育のマウスよりも26%早く迷路を脱出することが出来ました。迷路を早く脱出出来るということはアルツハイマー病が進行しておらず高い認知能力を保っていることを示しています。

 また、アルツハイマー病の原因物質であるAβが脳にどれぐらいあるのかを調べると、ダイエットを行ったマウスは通常飼育のマウスに比べてAβの量が67%少なく、またグレリンを投与したマウスもAβの量が48%少ない事が分かりました。

 これらの結果はダイエットをしなくても、グレリンを注射することでダイエットをした時と同じ効果が得られることを示しており、ダイエットによりアルツハイマー病の進行を抑制出来るのは体重減少などの結果では無く空腹を感じることにより胃から通常よりも多いグレリンが分泌されるためであることを証明しています。

 グレリンの空腹を感じさせるメカニズムは、既に拒食症などの治療に役立てる目的で研究が進んでおり、グレリンと同じ作用をする物質が各社で研究中です(下記表)。

会社名開発コード
メルク社MK-0677
ファイザー社CP424391
リリー社LY-444711

 これらの薬を飲むとグレリンが分泌された時のように空腹を感じるはずですので、拒食症以外の治療に使うと、結構辛い思いをするかもしれませんが、今回報告された現象を利用し将来、新しい老化予防薬やアルツハイマー病治療薬が開発されるかもしれません。

Category:ダイエット・メタボリックシンドローム

 Keyword:グレリン/8 空腹/25 脂肪/223 Alzheimer/66




コメント

いいっすね!=1

名前 コメント(※改行は省略されます)

※3回以上の連続書き込み不可
この記事のアクセス数: ↑B
[RSS]


■■ このカテゴリーのその他の記事■■

■■他サイトの関連記事(自動)■■
空腹
脂肪
グレリン
(Ghrelin)
「空腹ホルモン」と呼ばれ、空腹時に消化管の細胞で作られ、脳に到達すると食欲を刺激する。
他に、胸腺細胞の活性化機構が報告されている。
wikipedia Alzheimer


■■ 最近アクセス数の多い記事 ■■

すべて見る