2011.07.15
ワインに含まれる老化抑制物質「レスベラトロール(Resveratrol)」これまでの研究まとめ(1)
- (1)ワインに含まれるポリフェノール「レスベラトロール」
- (2)レスベラトロールを参考にした不老長寿薬の開発〜Sirtris社の取り組み
- (3)老化抑制に必要なレスベラトロール量、大量にレスベラトロールをとる方法
レスベラトロールの作用が発見されたのはもう10年近くも前になります。アメリカ、ペンシルベニアの研究者が2003年に有名な科学雑誌Natureで発表しました(1)。
- (1)Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan. Nature. 2003 Sep 11;425(6954):191-6 PMID:12939617
また、人間のSir2にあたるSIRT1にレスベラトロールが与える影響を調べたところ、同様な効果を与えることも分かりました。SIRT1は腫瘍抑制遺伝子であるp53タンパクの脱アセチル化を促進することで作用を発揮しているようです。この研究者らはオリーブオイルに含まれるクェルセチン(quercetin)にも同じ作用があることを報告しています。
この研究以降、酵母のSir2や、マウスのSirt1、ヒトのSIRT1は老化を抑制する作用のあるものとしてサーチュイン遺伝子(Sirtuin gene)と呼ばれ研究が盛んに行われています。そして、この発表以降、酵母に引き続き、線虫やショウジョウバエなどの様々な無脊椎動物で寿命を延ばす効果が報告され、ついに2008年に哺乳類(マウス)でも作用があることが報告されました。
アメリカの研究者らがPloS ONEという雑誌に報告(2)した内容では、中年(生後14ヶ月)〜老齢(生後30ヶ月)のマウスにレスベラトロール(4.9mg/kg/day)を食べさせて実験を行いました。そして、全身の臓器の遺伝子発現を調べたところ、カロリー制限した時と同じような遺伝子発現プロファイルを示し、脳、心臓、骨格筋などで老化に伴い起こる遺伝子発現変化を抑制し、加齢に伴う心臓疾患を防ぐことが分かりました。例えば筋肉ではカロリー制限により起こるのと同じようなインスリンに関連したグルコース吸収の変化が起こっているようです。レスベラトロールはカロリー制限と同様に、加齢に伴う染色体の構造変化や、転写の変化を遅らせるなど様々な部分で働いているようです。
- (2)A Low Dose of Dietary Resveratrol Partially Mimics Caloric Restriction and Retards Aging Parameters in Mice. PLoS ONE. 2008,3(6):e2264、PMID:18523577
- (3)Resveratrol Delays Age-Related Deterioration and Mimics Transcriptional Aspects of Dietary Restriction without Extending Life Span. Cell Metabolism 2008, 8(2) 157-168. PMID:18599363
この他に下記の研究はキツネザルを使った研究ですが、1日あたり体重1kgあたり200mgのレスベラトロールで体重低減効果があることが報告されています。食欲も減少するようでエネルギー摂取量が19%減り、安静時の基礎代謝が29%増加したことを報告しています。
- Resveratrol suppresses body mass gain in a seasonal non-human primate model of obesity. BMC Physiology 2010, 10:11PMID:20569453
次回はレスベラトロールのメカニズムを参考に開発されている医薬品について紹介します。
Category:#アンチエイジング・老化抑制技術
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Sirtris社HP Resveratrol
p53
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